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「父さん、この二十年間好きと言う感情を表すなら、両親と兄さんたちのみです。他人に対する恋愛感情のことというなら、全く持っていなかったというのは嘘になります。しかし、それを実行するだけ力は私にはありませんでしたから。もちろん、それが、私のせいだというなら訴えますよ。親であっても。」
本気でかみついた楓に親とは思えないほど小さくなった父は、恐る恐る言った。
「だって仕方ないじゃないか」
五十八にしてだってときたか。呆れてものが言えない。元々家族の中でかなりの発言権を持っている楓だ。いくらやり手とは言えど、娘に甘い父はやり込められてしまう。
「まあ、ガキの私にどうこうできる問題でもありませんでしたし。で、話ってそれだけですか?」
冷ややかな目を向け立ち去ろうとすると父は泣きそうな顔で追い縋った。
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