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それは誕生日の次の日。
冬の晴天の下、他人の家より少し広い廊下を歩いているときに何やら身の毛がよだった気がしたのを覚えている。
大体、普段は“ちゃん”付けしない父親の春樹が、いつも以上に上機嫌で部屋に呼びつけるからおかしいと内心感じていたんだ。
「用事とはなんですか?」
呼ばれた部屋を躊躇することなくがらりと開けて、ずかずかと入り込むと開口一番にそう問い掛けた。
父の背が見え、同時に鼻をある匂いが襲う。自身の作品を飾る部屋にしているここには父の仕事でもある生け花が毎日新しく活けられ飾られている。今日はカサブランカの大輪を飾っているせいか、むせ返りそうな甘い匂いが部屋に充満していた。
うっ。
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