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華道家元の娘にして、華道のなんたるかを未だにつかめない畠山楓はそのにおいに顔をしかめた。
「まぁ、入って座りなさい。」
既に入っていたのだが、背を向けたままの父には関係ないようだった。用意された座布団に不躾に座ると父はようやく振り返った。
畠山流華道の家元であり、生徒や師範たちにプリンスと囁かれているこのベビーフェイスの父は、年齢よりもぐっと若く見える。その顔がやたらうきうきと浮かれ顔をしているものだから、本当にこの人は五十八を過ぎているのだろうかと考えてしまった。
この血を引いていると思うだけでぞっとするのは、この人が可愛いだけの見世物家元なのではななくやり手であるからに他ならなかった。
父が振り返ったおかげで父にまじまじと顔を覗き込まれた。
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