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「最近どうだね。まぁ、お茶でも飲みなさい」
座った楓を上から下まで凝視し父はお茶を差し出しながら聞いた。
「そうですね。特に、これといって……。まぁ生徒さんが前と違いますし、少し勝手が違うので苦労はしていますが」
楓にも生徒をもつぐらいの華道の腕はある。それに教えるのがうまいと中々の評判を得ているのは父の知るところだった。だが、いまだ華道がなんたるかを理解出来ていないだけだ。
正直に答えたというのに父はつまらなそうな顔をした。
「そうかね……。一つ野暮な質問をしていいかな?」
いきなりかしこまって聞く父に不信感を抱きながらも、特に聞かれたくないような野暮なことはないし疚しいこともない。素直にはいと答えたが、これが後で後悔することとなるとはそのとき、いや、この瞬間は思わなかった。
なにやら父が聞くのを躊躇っているようだったので、楓は口にお茶を運ぶ。
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