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高いような低いような音と何かが倒れる音がしたかと思うと今度は続いて男の叫び声が聞こえてきた。
「逃げんじゃねぇよォォッ!」
ただ事ではない。
続いて女の人の悲鳴と空間を切り裂くような音が続けざまに3度耳に響いた。
夏の湿った空気の中でその音だけは不気味に軽い。
好奇心からか本能からかあたしの足は自然と声の方向に向いた。
ベランダに出れば何が起こったのか見えるだろうか。
カラカラカラ。
窓をスライドさせるといつものように簡単に開いた。
しかし、お気楽なあたしはこの時自分がモバストのプレーヤーの一人なのだという自覚がイマイチ欠けてしまっていたのだ。
拳銃を目の当たりにし、狂った男の叫び声を聞いてもまだなお……。
今思えばこんな軽率な行動はない。
「誰だ!?」
男がすごい勢いで振り向いた。
右手には拳銃――。
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