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『帰ろ?』
無言でテレビを見てると妻が小さく言う。
『②人で帰ったらェェんちゃう』
あれだけの勢いで
帰らん!
言うた以上…つまらん意地とかが邪魔して
素直に
うん。
と言えへんだ。
『今帰らんともっと帰りにくなるよ?』
んな事ぁ~言われんくても分かってる。
この、ヘンコとも言える頑固さは親父譲り。
ただ…
それを伝授した親父は
もっとワシらを頼って来い…
帰って来い…
と
言い残し帰って行った。
なんやねん。
『明日…泊まる用意しといて。』
と…
何か…負けた感じで
妻に言う。
わかった。
と言葉にせず微笑んだ
妻。
捨てれる時に捨てとこ。
しょ~もない意地なんて。
そう考えを改めてたキッカケは…
市役所から車で出る時…
フと見た
ルームミラーに写った
寂しそうに見送る母の姿を思い出したから…
くそっ。
次の日の土曜日。
重たい足取りで実家へと…。
『帰ってきたんか!』
出迎えた父。
一言…
おおきに。
そぅ言うと
沙耶香を妻から奪い取り
『可愛い~服着せてもろて~☆
可愛い~なぁ~さぁちゃん!』
と…
少し涙を浮かべ茶の間へ。
『こないだは…
ごめん。
言い過ぎた…』
台所で食事を作ってる母にそぅ言うと
『かまへん…自分の息子が言う事やから。』
と
手を止める事なく
こっちを見る事なく
いつも通りの口調で返してきた。
食卓台には…
⑤人分の食事が既に出来上がってて…
部屋にも
着替えと
布団が敷いてあった。
んま…
なんやねん………涙
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