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壁
『小児病棟に移りましたので…』
と女医師が受付前まできた。
返事もせず医師を見る。
軽くお辞儀をして立ち去ろうとする医師。
『…おい。』
呼び止めた。
『…沙耶香にもしもの事あったらどなぃするつもりや』
黙って立つ医師。
『俺らは病院に連れてくる事ぐらぃしか出来へんねん。それが間違ってたんかも知れん…少なくともこの病院に来てアンタに診せたんは間違いやったんやろ。』
それでも黙る女医師。
男なら間違いなく殴ってた。
『…命かけろよ…今から。沙耶香にもしもの事あったらアンタもただじゃおかんで』
誰も止めんかった。
止める気力も無かったらんやろ…。
気力みたいなもん…
俺かて既に無いよ…
ただ…
気力も体力も限界で闘ってる沙耶香を思うと、そんな泣き言言うてる場合じゃない。
時計を見ると既に②時を回ってた。
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