1072人が本棚に入れています
本棚に追加
/97ページ
父の言葉
『お前…ちょっと部屋行け』
帰ってきた父は、義父と引き離すキッカケを作りたかったよぅで。
何も言わずに自分の部屋に入った。
部屋の端に座りタバコを吸う。
涙も枯れ泣く事すら出来へん…
何気なく本棚を見た…
あぐらをかき…
沙耶香を抱く俺の写真。
生まれたての沙耶香の寝顔。
妻に抱かれ…唯一笑っている沙耶香。
③枚の写真が目に入る…
自然と涙が出てくる…
顔をうずめて泣いていると、
今度は静かに戸を開け父が入ってきた。
『大丈夫か…?』
涙を拭きながら
うん
と答える。
『すまんなァ…』
父がいきなりの謝罪。
『なんで?』
と聞くと…
『ワシは…』
ここに来てまた泣き始める父。
俺以上に泣いてる…
『お前の今の気持ちを分かってやれん…』
「…うん。」
『お前と俊也は大きな病気も大きな事故も無かった』
「…?…うん。」
『…お前はその歳で自分の娘を亡くしたけど…』
また泣き始める。
『…一番辛いお前の気持ち…
ワシは…
お前らが元気におってくれるお陰なんやけど…
分かってやれへん…
こらえてくれよ…』
そう言って父が座り込み泣く…
昔から厳格な父。
中学を卒業し大工の修行に入り…その道では③⑤年の筋金入りの父。
筋道外すよぅな言動や行動を取ると我が息子でも容赦のない鬼の様な父。
その父が頭を下げ泣きながら謝る。
掛ける言葉がなく黙っていると
『…落ち着いたら沙耶香のとこ行ってやれ…』
そぅ言って父は部屋を後にした…。
この時父から受けた言葉
息子として今でもしっかり心に残っている…
最初のコメントを投稿しよう!