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別れ…
⑥月④日。
沙耶香の告別式。
喪主となった俺と、進行をする地区区長。
この区長と父は幼少期からの親友で家にもよく飲みに来る。
この日は…父との雑談や余談話などを交わす事なく、事務的にも思える程の進行ぶりやった。
午後②時…
葬儀が始まる。
近所のお寺の住職がお経を唱え始めた。
俺は最前列に正座し、妻は横に座り
ただただ住職のお経を下を向き聞いていた…
何気なく外に目をやると、親友ののんちゃんと嫁のめぐちゃんが参列してくれてた。
来てたんや…アイツ
ここからの記憶が余り無い。
この日覚えているのは
沢山の花に囲まれ
沢山の涙に囲まれた沙耶香。
毅然とした進行役が印象的やった区長の大槻さんが最後、花びらを棺にいれる時…
『こんな小さいのに…』
と棺に手をかけ泣いていた。
『さぁ~ちゃん!えぇとこ行くんやで!!』
『ありがとう…』
『ゆっくり休みや…』
『さぁ~ちゃん!!』
『さぁ~ちゃん…』
皆それぞれの想いや別れを言葉にする…
俺は…
花を添え
昨夜書いた手紙を沙耶香の傍らに添え
沢山の花に包まれた我が子を見つめ
息を飲み
『さやかー!!!!!』
と…
根限りの声で我が子の名前を叫んだ。
沙耶香を目の前にし、沙耶香の名前を呼ぶのはこの時が最後……
ポタポタ
と…沙耶香の頬に涙が落ちる。
祖母がその落ちた涙をふき取り
『ひ~くん…』
と両肩を力無く掴んだ…
程なくして住職が
『棺を閉めます…』
と言った。
これで最後やと
沙耶香をこうして目にするのは
これが最後やと…
そぅ思うと胸の奥が苦しくなり
息が出来ず
声も出ず
フラフラと自分の部屋に戻り座り込んだ……
沙耶香の死を目の当たりにし…
眠ったままの沙耶香を見続け…
それでも目の前には沙耶香がいた。
けど
それも今日で最後…
この時
⑥月②日のあの朝の病院で…男性医師が言った言葉を思い出す…
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