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途端に、部屋の中の霧は薄くなる。それを見て一人俺は、ホッと胸を撫で下ろした。
瑠璃葉ちゃんを家まで送り届けて、俺は相談所へと戻る。
相談所に戻ると二人の姿があって、俺は佐嶋遼の状態を報告した。
俺から話を聞くと、万事さんが煙草の煙をフーッと吐いた。
「ま、予想通りだったわけだな。思い込みって怖いねぇ」
「だからお前の数珠がなくて、帰って来た時には霊がウロついていたわけだな」
「仕方ないだろ…ああする以外、方法浮かばなかったんだよ」
「朝岡瑠璃葉ちゃん、可愛かったしなぁ♪」
「…………キレますよ?」
「やってしまったものは仕方ない。鬼灯、佐嶋遼の家に行く。案内しろ」
短時間で往復させるのか…相変わらず人遣いが荒い。
でも、これは一刻も速いほうがいいだろう。だから敢えてそんな文句は飲み込んだ。
「鬼灯、鞄持て」
「そこまで知るか!!自分で持て、それくらい!!」
「チッ、使えんやつだ」
………こいつの性格が、もう少し可愛げがあればよかったのに。こんな時、つくづく思う。
またも佐嶋遼の家の前に来る。
夜と言ってもまだそんな遅い時間でもないのに、辺りに人影は見当たらない。
「好都合だ」
稚鈴がニヤリと笑う。
その顔はどう考えても悪役顔だ。
持ってきた鞄…小さなトランクを地面に置き、カチャリと開ける。
中にはありとあらゆる御札と、人形(ひとがた)と呼ばれる依り代というものなど、除霊や結界に関する道具が入っている。
稚鈴はその中から二枚御札を取り出すと、それを死角になるような、佐嶋宅の塀に貼る。
御札を貼って再び玄関前に戻ってくる。
稚鈴は目を閉じ、両手を色々な形に組み合わせる。
髪が風もないのに、フワリと舞い上がった。
最後に両手親指と人差し指、それから薬指で三角を作り、残り二本をキュッと絡ませた。
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