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そして、稚鈴はカッと目を見開く。
「『結界、包囲』!!」
そう稚鈴が叫ぶと、一瞬で佐嶋宅を半透明の結界が包む。
稚鈴は両手をパッと離すと、左手は開き指を合わせ、右手は拳を作る。
「『結界内霊魂、滅』!!」
今度はそう叫び、拳を左手の平にパンッ!!と勢いよく打ち付ける。
すると、家を覆っていた黒いモヤは一つに固まり、破裂するように消えた。
「これで、除霊と結界は完了だ。佐嶋遼が霊魂にやられることはないだろう」
鮮やかな除霊と結界に、何度見ても俺は呆然としてしまう。
こんなに簡単に、あれだけの霊を一気に除霊することが出来る力量…こんな小さな体のどこにそんなものがあるのか。
「何をしている、鬼灯。相談所に戻るぞ」
「え、あぁ…」
サッサとトランクを畳み、稚鈴はスタスタと歩いていく。
「鬼灯、三葉学園だが…あの場所は面白いぞ」
「面白い?」
「あぁ。さっき万事に資料を貰った。『ヨウコさん』…どうやら単なる雑魚ではないらしい」
「どういうことだよ?」
「お前もあとで資料を見るがいい。今回の依頼、お前には手伝ってもらうぞ」
ニヤッと魔女のように俺に笑いかける稚鈴。
俺は、この顔を知っている。何かよからぬことが起こる前兆の笑顔だ。
「決戦は明日。夜8時55分に三葉学園だ。遅れるなよ」
「俺に拒否権はないのか…」
「あるわけがないだろう」
「俺は人権すら、ないがしろにされてる気がするよ…」
「お前の人権なんてもんは、私の前では無に等しい。気にするな」
「これ以上に気になることなんて滅多にねぇよ!!」
ああ…明日なんか来なければいいのに…。
そんな絶対的に可能性のないことを虚しく願い、相談所へと重い足取りで向かった。
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