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三人でそこに書かれた数字を数える。それが言い終わると、またも静寂が訪れた。
「………稚鈴」
深刻そうな顔をして万事さんが言った。
「なんだ」
「お前…どっからか低俗霊を引っ張って、佐嶋遼の家に憑かせろ」
「…万事さん!!あんた、相談所の所長でしょ!?」
「だってこんだけの額が動かせるんだぞ!?使わん手はないだろーが!!」
「使うなよ!!深刻そうな顔して何を言うかと思えば!!それでもここの最高権力者なのかっ!!」
「権力者でもあり経営者だ!!金はいくらあっても損はない!!」
「資本主義社会もいいトコだろ!!権力乱用すんなよなっ!!」
「大人にしか分からん苦労もあるんだよ秋草少年!!権力を振るいたくなる時もあるんだよ!!」
「威張って言えることかっ!!」
そんな俺たちのやり取りを無言で見ていた稚鈴だったが、ふと考えた素振りを見せて口にする。
「…万事、つまりはアレか?」
「アレ…ってなんだよ?」
嫌な予感を感じながらも、一応聞いてみる。
稚鈴は真顔で答えた。
「『上玉は逃がすな』」
「グッジョブだ稚鈴!!」
「グッジョブなわけあるかぁぁぁあ!!」
それから更に数日後。
三葉学園の裏手に、小さな鳥居と小さな社が作られた。社の中には二体の狐の彫り物が置かれていて、一般人もお参りが出来るようになっている。
社が完成されたその日から『ヨウコさん』の噂はなくなり、空き教室の立ち入りは完全に出来ないようになった。
そして、その年から三葉学園の学園祭は『お狐祭』と名を変えたのだと、風の噂に聞いた。
冬らしくなってきたその時期。一人の人物が相談所の窓を見上げて微笑む。
「久しぶりだけど…変わってないかしら。ほーおずーきちゃん♪」
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