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しかし、その数珠が体から離れると、さっきのように幽霊がかなり憑いてくる。そうなっては数珠をつけても無駄で、こうやって直接御祓いをしてもらいに来るのだ。
「ネックレス形態だと厄介か…しかしこれくらいの大きさがないと囲めないからな」
「この際ベルトにしちゃうかぁ?秋草少年よ?」
男性が鼻で笑いニヤニヤし、新しい煙草に火をつけながら、俺にチャチャをいれる。
「それだけは勘弁してください…冗談でもキツいっすよ、万事(ばんじ)さん」
「そうかぁ?おしゃれだろ、おしゃれ♪」
窓際に置かれた机。窓を背にするように椅子に腰掛けながら煙草をふかす男性の名前は、鈴生 万事(すずなり ばんじ)。
無精髭をいつも生やし、髪を掻きあげたまま止まったような、微妙に整えた髪型をしている。煙草はいつも手放さず、常に吸うヘビースモーカー。
いつもいい加減なことしか言わないし、いい加減な態度だが、いざという時は頼りになる(こともある)。
「ホント秋草少年は『うち』の常連だねぇ。高校卒業したら働かない?給料は毎日の御祓いと予防♪」
ニヤッと計算高い笑みを浮かべながら万事さんが言った『うち』とは、この『鈴生心霊相談所』のことだ。
名前だけ聞けばかなりインチキ臭い会社だが、幽霊や心霊現象に関することを仕事にする、『その道』のプロ。
除霊や結界などが主な仕事で、それを任されてるのが僅か15歳の稚鈴だった。
稚鈴は生まれた時から強い霊能力を持っていて、大体の仕事は一人で片付けることが出来るほどの実力なのだ。
「それって、給料ないじゃないですかっ!!働くというよりボランティアっすよ!!」
「チッ、気付いたか」
「気付かないわけないでしょう!!大体、卒業してからってなんですか?稚鈴だって学生でしょーに」
「私は学校に行ってないから学生ではない」
「本当なら学生なんだよ!!行けよ学校!!」
「何故だ?あんな低レベルなことをするために行く意味が分からない。教科書なんて幼稚も幼稚な内容だしな」
後光すらも見えてしまうほど堂々と言い放つ稚鈴。
…ホントにムカつくね、こいつは。どうせ俺は努力の人ですよ(泣)!!
「じゃあ制服なんか着てるんじゃねーよッ」
「何を着るか考えるのが面倒だからな」
「女としていいのか、それで……いつも制服だと思ったら」
「稚鈴はそれが似合ってるからなぁ、いいんじゃないか?」
「…そんなのただの制服フェチオヤジの発言ですよ」
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