974人が本棚に入れています
本棚に追加
一方…俺と朝岡瑠璃葉は、お互いなんだかぎこちない距離を保ち、無言で歩みを進める。
このシーンとした間を、どうしようか俺は必死に考えていた。
やっぱり俺が年上だからリードするべき?いや、でも相手は俺が年上だって知らないわけだし…って、だからと言ってこのままだんまりも俺としては凄く気まずいしなぁ…。
冷や汗すら感じる静寂に、一人心で呟いてみる。
ああ、なんて阿呆らしい…。
「あの……」
「…えっ!?あ、はいっ!!?」
いきなり朝岡瑠璃葉が口を開く。俺は思わずかなり驚いて、体がビクッと大きく揺れた。
「あ、すみませんっ!!」
「い、いや、こちらこそ…」
謝られても情けないだけなので…とは言えない。
「あの…その制服、冠木高校(かぶらぎこうこう)ですか?」
「うん、そうだよ。知ってるの?」
「友達がそこの制服に憧れて受験したんです」
「制服なら三葉だって可愛いじゃん。女子は断然、三葉がいいよ」
三葉学園の制服は、灰色のブレザーで袖と襟、裾に黒いラインが入っていて赤いネクタイ。
近所では評判の制服で、県内で人気制服ランキング(なるものがあるのだが)では、上位の常連校だ。
「私も制服で選んだんです、この高校」
フワリと笑った顔は、清楚な優しい感じ。
顔も(俺的には)『上』クラスで、普通の健全な高校生男子なら胸もトキめいて当たり前だと思う。
まぁ今は何より、自然に笑ってくれたことが俺には嬉しかった。
「三葉って科が分かれてるよね?朝岡さんは何科?」
「はい。特進と普通と音楽で。私は頭も良くないし、音楽の才能ないですから普通科ですよ」
「頭が良くないわけないでしょ。うちより偏差値高いんだし、俺よりは頭いいんじゃないかな」
「そんなことは…秋草さん頭良さそうだし」
「いや、全然。あ、名字だと呼びにくいと思うから、名前でいいよ。『さ』が続くから言いにくいよね」
「そうですか?あ、それなら私も名前でいいですよ」
一回話し出すと、不思議なもので結構話題は絶えない。
「はじめ私、すっごく不安だったんです。心霊相談所なんて行くの」
心を許してくれたのか、思わず本音が漏れた。
「まぁ…普通はインチキっぽいからね。でも安心していいよ。あの人たち、ああ見えて凄いやり手だから」
「本当にあの子がやるんですか?除霊…っていうか」
「稚鈴でしょ。皆さんそう言うんだよ。あいつ、あんな外見してるから」
最初のコメントを投稿しよう!