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でも俺は、稚鈴の凄さを知ってる。あんな小さな体で、やることと言ったら半端ないもんだ。霊魂たちに対しては『冷徹非情』。容赦ないったらありゃしない。
「俺も認めたくないんだけどさ、あいつは『本物』だよ。仕事は絶対にやり遂げる」
「鬼灯さんがそう言うなら…信じてみます。遼を助けてくれるって」
ニッコリ笑った瑠璃葉ちゃんに、俺も自然と笑顔になる。
「あと、気になったんですけど…それ、御守りか何かですか?」
『それ』と言って瑠璃葉ちゃんが指差したものは、首にかかった大きな数珠。
稚鈴特製の幽霊除け結界グッズ。他にもブレスレットだったりストラップだったり、「つけられる物はすべて身に着けろ。by稚鈴」の命令で、身の回りは稚鈴の結界で守られている。
こうまでしないと霊が寄ってきてしまうという事実が虚しい…。
「う、うん!そう、御守りっ!やっぱ変?」
「いえ、全然。学ランだからかな、あんまり違和感ないですよ?」
それはそれでどうなんだろう…少し悲しい。
しばらく歩き、閑静な住宅街へとたどり着く。瑠璃葉ちゃんが少し先の方を指差した。
「あの、赤いポストがある家が遼の家です」
住宅が建ち並ぶ道に、後から取って付けたような赤いポストが目につく。なるほど、あれは分かりやすい。
二人で佐嶋宅に近付いていく。近くなるにつれ、俺はギョッとした。
目の前が赤いポストという位置まで来て、家を見上げて唾液を飲み込む。
家全体が黒いモヤで覆われている。全身に寒気を感じてしまうほど、それはかなり危険な状態だった。
「鬼灯さん…?」
俺の様子がおかしいことに気付き、瑠璃葉ちゃんは首を傾げる。
「瑠璃葉ちゃん…友達、会わせてもらえない?」
「はぁ…いいと思いますけど…ちょっと聞いてみます」
瑠璃葉ちゃんは慣れた手つきで躊躇なくインターホンを押す。何回もこの家に来ている証拠だ。
遠くにピンポーンと聞こえ、程なく女性の声が聞こえる。
「…はい、佐嶋ですが」
覇気を感じさせない、弱々しい声だ。
「おばさん?私、瑠璃葉です」
「瑠璃葉ちゃん?ちょっと待ってね」
瑠璃葉ちゃんだと分かると、声は少し明るさを取り戻す。声が切れると、家の中からパタパタと駆けてくる音がした。
「いらっしゃい瑠璃葉ちゃん。毎日ありがとね」
笑顔でドアから出てきたのは、佐嶋遼の母親と思われる女性。
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