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髪を後ろで軽く束ね、Tシャツにロングスカートというラフな格好だ。
笑っているその顔は、疲れが滲み出ていて顔色も悪い。
「こんにちは。遼、会えるかな?」
「瑠璃葉ちゃんなら遼も喜ぶわ。……そちらの方は?」
母親は虚ろな瞳を俺に向ける。不審なものを見るような、探りを入れる目付きだ。
「秋草鬼灯さんって言ってね、遼のこと相談乗ってもらったの」
「いきなりすみません。秋草です。娘の遼さんにお会いしたいのですが」
「はぁ…瑠璃葉ちゃんが言うなら…散らかっていますが、どうぞ」
あまり好意的でない態度で招き入れる。
それもそうだ。登校拒否の娘に会いたいなんて、初対面が言うことじゃない。
「…失礼します」
瑠璃葉ちゃんに続き、家の敷居を跨ぐ。
瞬間、グンッ!!と何かが急に覆い被さってきたような、重圧を感じる。
これは…かなりヤバいことになってんなぁ…。
瑠璃葉ちゃんたちに悟られないよう、平然を装いながら家へと上がる。
案内されたのは二階にある部屋。ドアの前に立っただけで、気分が悪くなる。
「遼?私、瑠璃葉だけど…入るよ?」
ドアに話す瑠璃葉ちゃんの言葉に、掠れた声が返ってきた。
「…瑠璃葉?」
「うん。入るね?」
瑠璃葉ちゃんがドアを開けた瞬間、部屋にはドス黒いモヤ渦巻いていた。
家を覆ってたものとはケタ外れの、黒い濃霧のようなものが部屋には充満していて、俺には微かにしか部屋の中は見えない。
思わずギュッと首の数珠を握り締める。
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