『ヨウコさん』Ⅰ

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髪を後ろで軽く束ね、Tシャツにロングスカートというラフな格好だ。 笑っているその顔は、疲れが滲み出ていて顔色も悪い。 「こんにちは。遼、会えるかな?」 「瑠璃葉ちゃんなら遼も喜ぶわ。……そちらの方は?」 母親は虚ろな瞳を俺に向ける。不審なものを見るような、探りを入れる目付きだ。 「秋草鬼灯さんって言ってね、遼のこと相談乗ってもらったの」 「いきなりすみません。秋草です。娘の遼さんにお会いしたいのですが」 「はぁ…瑠璃葉ちゃんが言うなら…散らかっていますが、どうぞ」 あまり好意的でない態度で招き入れる。 それもそうだ。登校拒否の娘に会いたいなんて、初対面が言うことじゃない。 「…失礼します」 瑠璃葉ちゃんに続き、家の敷居を跨ぐ。 瞬間、グンッ!!と何かが急に覆い被さってきたような、重圧を感じる。 これは…かなりヤバいことになってんなぁ…。 瑠璃葉ちゃんたちに悟られないよう、平然を装いながら家へと上がる。 案内されたのは二階にある部屋。ドアの前に立っただけで、気分が悪くなる。 「遼?私、瑠璃葉だけど…入るよ?」 ドアに話す瑠璃葉ちゃんの言葉に、掠れた声が返ってきた。 「…瑠璃葉?」 「うん。入るね?」 瑠璃葉ちゃんがドアを開けた瞬間、部屋にはドス黒いモヤ渦巻いていた。 家を覆ってたものとはケタ外れの、黒い濃霧のようなものが部屋には充満していて、俺には微かにしか部屋の中は見えない。 思わずギュッと首の数珠を握り締める。
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