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やがて日が沈みだして、辺りが暗闇に染まりだす頃には夕飯の準備を始めた。 今夜の主役である晃司は、料理を手伝わないので二人で飲むシャンパンをテーブルに置いて、キッチンで料理をしている泉の様子を観ていた。 ケーキを焼いて、生クリームを付けてトッピングをしておき、チキンを焼いたり野菜たっぷりのサラダを作ったりと忙しくしている。 「ふぅ…やっと出来たから食おうぜ…晃司っ」  一時間ぐらいですべての支度を終わらせて、一息ついた泉は既に晃司の座っているテーブルに近付き、椅子に腰をおろした。 「俺も手伝ったほうが良かったんじゃ…」  既に箸を片手に食べていた晃司は、いくら主役でも少しは手伝うべきと思い、申し訳なさそうに言葉を洩らす。 「いいからお前は何もすんなっ!ビックリさしてやるから…」 しかし、気を遣うように聞こえる晃司の言葉に慌てて答えた為に、思わず口が滑ってしまった。 「泉…?」 キョトンとして何のことか分からない晃司は、不思議そうに覗き込む。 「あ…べつに何もねぇから気にすんなっ」 つい口走ってしまったとはいえ、本当の事は言いたくないのでどう話を逸らそうか考える。
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