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テーブルの上に置かれたケーキには苺が飾られてあり、数本の蝋燭が立ててある。 ライターで火をつけると、泉は部屋の明かりを消してしまい、真っ暗になった。そして、暗闇の中で泉の足音が聞こえていた。なにやらどこかに行って帰ってきた様だが、僅かな蝋燭の明かりでは分からない。 「泉?」 気になる晃司は、戻ってきた泉に問う。薄明かりの中では姿が見えにくい為、足音だけしか分からなかった。ナイフと皿を取りに行ったのだと思えた。 「ちょっとケーキナイフを取りに行って来ただけだ!そんなことより早く蝋燭の火消ってっ…」  戻ってきた泉は、皿とナイフを両手に持ってきていた。ケーキを見つめるとまだ火が消されておらず、消すように急せる。 「あ、うん…」 晃司は返事をすると、蝋燭の火に息を吹きかけて消していった。 すべての火が消えると暗やみが広がり、すぐ様に部屋の電気が点けられた。 「…誕生日おめでとう…」 その瞬間、クラッカーの音と共に泉の声が聞こえた。 「えっ…何!?」 少し驚いたような顔をして意味が分からない晃司は、泉を見て茫然としている。
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