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「まさかこんな風に祝って貰えるなんて思わなかったから…」
少し小さめな声で言葉を洩らす。サンタなどいないことは知っていたし、クリスマスを祝って貰う事はあるが嬉しいという感じがしなかったが、今目の前にはサンタがいる。多分、今まででこんなクリスマスは過ごすことがなかったから嬉しかった。
そう思っていると次第に目のあたりが熱くなってきた。
「晃司?…何で泣いてんだよっ!」
黙々と食事を進める泉は、なにやら視線を感じて顔を上げてみる。
その途端、目の前にいる晃司が目から涙を溢れさせていた。一体何で泣いているのか分からないので声をかけてみる。
「えっ…何でもないよ」
泉の言葉に目を手で拭ってみると、涙で濡れていた。なんで泣いてるのか分からない晃司はゴシゴシと目を拭いた。
「男が誕生日祝いで泣くなよ!これからもちゃんと俺が祝ってやるから…」
今まで誕生日を祝って貰うことはあったと思う。だが、この男が心から嬉しいと思えるのはたった一人に祝って貰うこと。そんな事を分かっている泉は、照れ臭く顔を赤らめて唇を開いた。
「…ありがとう」
顔を赤らめて子供っぽい感じの泉の言葉に晃司は、再び目が熱くなり拭った。それはいままでで最高の誕生日と思える。
テーブルを挟んだ向かいには大切だと思える相手がいる。それだけで幸せを感じる。
これからも幾度とある誕生日を共に過ごしてくれると言ってくれた泉の顔を見て、心から感謝の気持ちを伝えた。
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