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「…大夢」
由生が驚いた顔をしている。
完璧に勘違いしている。
そんな俺を琉架は、心配そうに見ている。
「…あはは。なんだよ、由生。邪魔しにきたのかよ」
ズキッと痛み出す胸に、俺は唇を咬んだ。
「っ!」
由生の泣きそうな顔。
こんな想いは、しちゃいけないんだ。
由生が好きになるなんて…。
「…大夢」
さらに、由生は泣きそうな顔をする。
今すぐ抱きしめて、嘘だと言いたい。
そっと琉架が俺の袖を掴んだ。俺は何も言わず首を横に振った。
「大夢…」
「最後まで見ていくきかよ」
琉架の頬に触れ、キスをするフリをした。
「…ごめん…」
由生は、その場から走ってさってしまった。
由生がいなくなったら、ホッとしたのか涙が出てきた。
「…大夢っ」
琉架は、そんな俺を優しく抱きしめてくれた。
「琉架…」
「泣いていいんだよっ…」
気がつけば、琉架まで泣いていた。
「ぅ…っ…ひくっ…」
気が緩んだら、涙が止まらなくなってしまった。
コンコンッとドアを叩かれ、俺は涙目で振り返った。
「椎名が心配してたぞ」
保健医の柴田がそこに立っていた。
「…大夢、琉架…オレじゃ役に立たないかな?」
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