191人が本棚に入れています
本棚に追加
.
「女の子は笑顔が一番よ! ね?」
「……うん」
「それとね、さくらちゃんには今日みたいに笑ってほしいけど、泣くのは全然恥ずかしいことじゃないんだよ。さくらちゃんはまだ子どもなんだから、我慢しなくて良いんだよ」
………我慢しなくて良いの?
「………。せ、医師……?」
「何かな?」
「……わたし、早くリハビリして、自分の足で歩きたい。車椅子に乗って操作するのは楽しいけど……自分の足で歩いて、この病院の中を探検したい……」
「うん、ちゃんと分かってるよ。でも、さくらちゃん。筋肉が衰えたのは、足だけじゃないのはさくらちゃん自身が一番よく分かってるよね?」
「……うん」
うん、分かってる……。
15日間も眠ってて、足だけの筋肉が衰えるわけない。
……両手も、思うように動かないんだ……。
食事する時、手に力が入らなくて箸が上手く持てずに床へ落としてしまう。
目だって、前より見えなくなっている。
以前、使っていた眼鏡をかけてみてもピントが合わない。
……自分が自分じゃない、んだ……。
それが、目覚めてから、わたしは一番怖かった……。
「……さくらちゃん。リハビリは君の様子をしばらく見て、始めようと思う。それまで、車椅子を誰かに後ろで押してもらうんじゃなくて、自分の手で操作出来るようになってね」
「はい」
そして、わたしは病院の中を自分の手で車椅子を操作出来るまで生活することになる。
.
最初のコメントを投稿しよう!