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早くリハビリを始めて。
早く自分の足で歩けるようになって。
早く病院から退院して。
早く自分の家に帰る。
だから、リハビリを始めることを誰よりもわたしは待っていた。
でも、昨日に車椅子を返して、歩行器を初めて使って使え切れなかった時、わたしの中で何かが“プチッ”と切れた。
……もう、自分の足で―――歩けなくて良い。
このまま、車椅子生活を送りたい。
本気でわたしはその時、そう思った。
今、思えば―――現実逃避だ。
だけど、もしそんなことを言ったら、周りに何て言われるか分かんないから言わなかった。
看護師さんに案内されながら、歩行器でゆっくりゆっくり倒れないように一歩一歩進みながら、リハビリセンターへとわたしは向かった。
両足に感覚は無かったけど、歩行器とのバランスとコントロールを保つ両手は痛かった。
もう、どうでも良いよ。
もう、自分の足で歩けなくて良いから、わたしを此処から出してよ。
もう―――嫌だ……。
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