無の世界

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 . 「―――……」 「……え……?」  不意に誰かにわたしは呼ばれた。 「―――……」  何て言っているのか分からないけど、誰かがわたしを呼んでる……。 「……いかなくちゃ……」  それ以外に何も考えられない……。  それしか、思い浮かばない……。  ……ちゃぽん……。  わたしは大きな湖に右から足をつける。  キレイな真っ赤な花が欲しい……。  それはもう、どうでも良くなった。  ちゃぽん……。  大きな湖にわたしは右から足をつけ入り、左足を一歩踏み出す。  大きな湖の深さは、女の子の時は膝くらいだったがわたしの時は足のすねくらいだった。  大きな湖の温度は冷たくもなければ、温かくもない。  何も感じない―――分からなかった。  ―――何て説明すれば、良いんだろう……?  上手く説明するのは難しいな……。  本当にこの時、何にも考えられなかったんだ……。  ただ、大きな湖の先へたどり着くことだけに脳が支配された。  わたしは誰かに呼ばれている……。  だから、いかなくちゃ……。  両足が―――身体が、大きな湖の先に引き寄せられる……。  見えない“何か”に引っ張られる感じ……。  ちゃぽん……。  わたしは大きな湖の中で2歩目―――右足を踏み出す。 (―――あと一歩……)  何故か、そう思った。  あと一歩踏み出せば……。  ……わたしは、楽になれる……。 .
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