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「青……」
「青?」
「……クマさんの青いパジャマ……」
「クマさん?」
「ママに買ってもらったって喜んでた」
「え」
「自分で選んだんだって。女の子はピンクより青色が好きだって言ってた」
「……そう」
「お母さん?」
女の子の特徴を言ったら、お母さんは急に口数が少なくなった。
それから、わたしは歩行器でトイレへ行って自分の病室に戻ろうとしたら……。
「ねぇ」
「んー?」
わたしの病室にはお父さんがいて、お母さんと何か話してた。
わたしが病室に入ったら、二人はすぐに話をするのを止めちゃうから、わたしはその場で二人の話を立ち聞きすることにした。
「……さくらが意識ない時、この病室の左斜めにいた子、どんなパジャマ着てたっけ?」
「青いパジャマだろ? 確か、柄はクマ。なした?」
……え……?
「……さくらが意識ない時にその子に会ったんだって」
「は?」
「“あり得ない”よね……」
………?
何で、わたしがあの女の子を見ることがあり得ないの……?
その前にお父さんもお母さんも、女の子のことを知っているの……?
わたしの病室の左斜めにいた……?
「だってその子は、さくらが意識ない時に……」
確か、わたしの左斜めの病室は今……。
「―――死んじゃったから……」
え……?
死んだ、って……?
「看護師さんたちが話してたんだけど、その子は生まれた時から心臓が弱くて本当なら1歳まで生きられなかったらしいの……」
女の子は、心臓が弱かった……?
「その子のお母さん、その子の死をいつでも覚悟してたみたいなの」
女の子は、いつも死と隣り合わせだった……?
「パジャマは、青色のクマ柄が一番気に入ってたんだって」
だから、女の子はわたしと会った時にそのパジャマを着てたの……?
「なぁ。その子の名前は?」
「分かんない。だって私はさくらのことで精一杯だったもの」
「今から看護師さんたちに聞いてこよっか?」
「止めなさい。私たち、関係ないでしょう。無神経にも程がある」
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