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「さーくらちゃん」
「はい」
15日間の記憶を思い出してから数日後、医師が病室にやって来た。
「元気ですかーっ?」
「まぁ、ぼちぼち……」
「そうですか。今日はさくらちゃんにお知らせがありまーす」
「……お知らせ?」
「お知らせっていうか、決定事項だね」
「何ですか?」
「さくらちゃんには、実は今日から大部屋に移ってもらいまーす」
「そうですか……」
ん?
……医師、今なんて……?
……大部屋……?
「………。って、うぇええっ!!!?」
「今、さくらちゃん、固まってたねぇ~」
「医師っ! 医師っ!? 大部屋って、なんですか!?
なにかわたし、悪いことしましたか!?」
「悪いこと? 何にもしてないと思うけど?」
「じゃあ、どうして!?!?」
「さくらちゃんが個室の病室にいたのは、自分の足で歩けなかったから。でも今は、歩行器を使ってだけど自分の足で歩けるでしょ?」
「はい、歩けます」
「普通はね、患者さんは大部屋の病室に入院するんだ。さくらちゃんが個室の病室だったのは……分かるよね?」
「はい」
わたしは15日間、意識がなかったから。
「それに、さくらちゃん。僕や看護師さん、さくらちゃんのご家族やお見舞いに来てくれる人以外とは接することないでしょ?」
「あんまりないですね」
「じゃ、行こうか」
「え、何処へですか?」
「決まってるでしょう。大部屋へ移転するの」
「早っ!! 今からですか!?」
「あ。さくらちゃんの両親にはちゃんと話してあるからね。さくらちゃんの荷物も看護師さんたちに手伝って運んでもらうから」
……決定事項なのは分かるけど、心の準備というものがあることを医師、ご存知ですか?
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