シュウトくん

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 . 「……そんなこと、ありませんよ……」 「……え……?」 「シュウトくん、言ってました。『お母さんにはいつも感謝してる』って」 「何で……?」 「『毎日、家の家事ややんちゃな弟妹の世話で忙しくて疲れているのに、毎日必ず自分のところにちゃんとお見舞いに来て、僕を見てくれる。それが一番、嬉しいんだ』って」 「……嘘……」 「本当ですよ。こんなこと、嘘ついて何になるんですか……」 「……っ……そんなの……当たり前じゃない……。大事な息子なんだから……」 「…あっ! これ、わたしが言ったこと内緒ですよ? わたし、シュウトくんに『このこと、絶対にお母さんには言わないでねっ!?』って、口止めされてたんですから」 「……分かった……。さくらちゃん、ありがとう……」 「―――あっ、お母さんっ!!」  その時、ちょうどシュウトくんが車椅子で大部屋の病室に戻って来た。 「あらっ、シュウト。戻って来るの早かったわねっ」 「うんっ。今日はリハビリが思ったより早く終わったんだ」 「そっか」  シュウトくんのお母さんを見たら、シュウトくんのお母さんからは涙も泣き顔も消えていた。  母は強し、とはこのことか。 「じゃあ、シュウト。お母さん、今日は帰るわ」 「え、もう?」 「うん。シュウトの顔見たし。下の子たち家に置いて来たし、洗濯物も外に干しっぱなしだからね」 「分かった」 「シュウト。明日もお母さん来るからね。さくらちゃん、じゃあね」 「あ、はい」  そう言って、さっさとシュウトくんのお母さんは帰って行った。  シュウトくんのお母さんが帰った後……。 「………。ねぇ、さくらちゃん」 「んー?」 「お母さんと何か話したの?」 「なんでそう思うの?」 「何かお母さん、すっきりと言うか……何かに吹っ切れた感じだったから」 「あははっ。そうかもね?」 「え、お母さんと何言ってたの!?」 「ひ・み・つ」 「えー」 「シュウトくん」 「何?」 「わたし、シュウトくんに負けないから」 「え?」  わたしは―――自分に逃げていた。  だからわたし、明日からちゃんとリハビリ受けるね。  負けないで、頑張って、歩行器が無くても自分の足で歩けるようになるから。  ―――シュウトくんの分も含めて、地の上を自分の足で歩くから。 .
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