私が原因

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私が原因

突然、馴染みの皮膚科の先生から電話がかかって来た。   『やはり、今の寛くんの状態は異常です。もしかしたら、お母さん自身に問題があるかもしれないので、お母さんの血液検査もさせてもらえませんか?お金はこちらで負担しますから、できるだけ早く都合をつけて来て下さい。』   先生は、何でもない事のように、淡々と話をして、一方的に電話を切ってしまった。   私の血液検査をする事で、医学的に何が分かって、何が寛の為になるのかは、私には分からなかったけれど、先生の言葉に従って、血液検査を受ける事にした。     予約制ではない医院なので、いつも待合室で2時間以上待たされていたのに、その日は違った。 受付で名前を言うと、すぐに診察室に通された。 先生は特に深い説明をする訳でもなく、看護婦さんに私の血液を採取させると、一週間後に来るように言われた。     一週間。頭から『お母さんに問題』と言われた言葉が、頭の中をグルグルまわっていた。 この言葉は、今まで、寛を見て、義理の父だった人に、毎日の様に責められていた言葉と同じ言葉だった。 もしそれが、科学的に証明されたら、あの親子は『やっぱり自分の家系は問題なかったんだな』と小躍りするのかもしれない。彼らは、どうすれば寛の体質が治るか?より、原因はなんだったんだ?母親に問題ないのか?にずっとこだわっていたから。 アトピー体質が遺伝から来る要素も大きいと言う事は、私だって分かっている。 小児喘息で、苦しんでいた過去だってある。 まして、寛を妊娠するまで、私は煙草を吸っていた。妊娠発覚からは止めていたが、その事が今の寛に影響しているのではないかと、実際何度も悩んで来ていた。何度寛に謝ったかわからない。 ずっと…自分を責めて寛を育てて来てた。       話は簡単に終わった。 先生は検査結果の用紙を渡してもくれず、『異常なしだったね』とだけ言った。 私は、寛の状況に前進はないはずなのに、自分の責任は逃れられたような気がして、喜んでしまった。 『じゃぁ、私自身に問題はなかったんですね?』とつい念を押して聞いてしまった。 先生は少し考えた後に、 『でもね。今回の検査が全てじゃないから。寛くんが異常なのは事実なんだから…』 先生の言葉が止まった。 『………。今日でおっぱいあげるのやめて、明日からミルクだけにしてみて。』
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