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葛藤
家に着いてから、寛を寝かせ、何度も、浮かび上がっては打ち消して来た考えが、頭から離れなくなっていた。
こんなに苦しい想いをする位なら、医師も副作用の心配は少ないって言うのだから、ステロイド使って、無理やりでも肌を綺麗に見せながら、寛の肌が丈夫になるのを、ただただ待っているだけでも、いいんじゃないのかな…?
もう…嫌だよ…
どうしようもない気持ちに、押し潰されそうになっていた。
どの位の時間、そうして考えていたのだろう?
寛が起きて、泣いて私を呼んだ。
抱き上げ、おっぱいをあげる。
寛は上目遣いで私を見上げながら、音をたてて飲んでいた。
やっぱり…
この子にステロイドは使用できない…
寛は、まだ赤ちゃんだから、自分の肌について悩む事はない。
周りから、どんな目で見られても、私が愛してあげれば、それで傷つく事はない。
ステロイドに皮膚炎を治す力はないんだ。むしろ、逆に肌が本来持っている力をマイナスの方向に持って行く事だけは、立証されているのだから…
ここで私が世間の目に負けて、ステロイド使用した事で、寛が年頃になった時に、心無い人から迫害されてしまったら?
こんな社会だから、色んな意味で、将来選ぶべき可能性が閉ざされてしまったら?
考え過ぎかもしれない。
それでも、1パーセントでも、そんな可能性があるなら、私は選べないよ。
私は…私を見て、笑いかけてくれてる寛の笑顔を守りたかった。
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