夕立に相合傘

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二人の視線の先に居る少女は、自分の引いたクジをムムムと見つめ、黒板をジーッと睨み付け、ハァーと大きなため息をついたりしている。 その動作の一つ一つが、とても幼く見える。 遠目から見れば中学生か、ランドセルを背負わせれば小学生に見えるかも知れない。 横顔も綺麗というよりは可愛いという部類だろう。 長い髪をツインテールにでもすれば、より一層幼く見えるかも知れない。 結局のところ、とても高校生には見えないというのが、優一と操の統一見解であった。 「へんな気起こすんじゃないわよ?」 何やら妙な感覚を覚え、操は優一に釘を刺した。 「お前は俺に一体どういう印象を持っているんだ?稔ならともかく、俺がそんなことするわけないだろう」 大変心外である、と優一は口をへの字に曲げた。 なお、先頭の席で稔がくしゃみをしたが、気に留める者は誰も居ない。 「よーし全員決まったなー。それじゃあさっさと席を動かすように」 授業終了のチャイム。 明子はさっさと出ていってしまった。 「仕方ない。移動しますか」 クラスの誰かが呟く。 それを合図に、皆が一斉に動きだした。
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