夕立に相合傘

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ロングホームルームは基本的に六時限目、一日の一番最後の時限に割り当てられている。つまりやるべきことをやってしまえば早く帰られるということだ。 二年A組もそのルールに逆らうことはなく、席を移動させた生徒から次々に帰っていく。 そんな中、教室後ろ側の窓際の辺りがいつまでも賑わっていた。 「悪いねぇ優一。桐生さんの横を取っちまってさ」 おそらく一番賑わしているだろう稔が、いつものニヤケスマイルで優一の肩をこずく。 「何が悪いのかよく分からないが……。まぁ、授業の邪魔になるようなことはしないでくれ」 「この鈍感野郎は……」 言うだけ無駄と判断した稔は、続いて操に顔を向ける。 「桐生さんも悪いねぇ。ホントは俺より優一の方がよかったんじゃないの?」 「なっ!?」 操は手に持ったノートを落とした。 「な、何言ってるのよ!べ、べつに私は優一がいいなんて……その……」 「そうそう。そーいう反応を待ってたんだよなぁ」 あたふたと反応する操の姿を、稔は酒の肴のように楽しんでいた。 「やれやれ」 優一は隣の席に目をやった。 さっきから話に加わることもなく、黙々と帰りの支度をしているクラスメート。 特に迷惑そうにはしていないが、挨拶ぐらいはしておいた方がいいだろう。 優一は話し掛けてみることにした。
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