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「せんせー。ここですよー」
優一が振り向いて手を上げる。
「憩いの場に邪魔して悪いな。……おや?」
ツカツカと歩いてきた明子は優一らの前まで来て足を止めた。
「なんだ立花。こいつら一味に加わったのか」
「えぇ。そうですよ」
「ほほぅ」
次に明子は、意地の悪い笑みを浮かべて操を見た。
「こいつは心穏やかじゃないなぁ。桐生ぅ?」
「な、何を言ってるんですかっ!?」
操は不自然に強く反応した。さきほどの姿からは想像出来ないくらいあたふたとしている。
顔も赤くして、とても幼く見えた。
「分かりやすい反応をありがとう」
明子は意地の悪い笑みのままだ。何でもお見通しという雰囲気を漂わせている。
「もう!知りませんっ!!」
操は頬を膨らましてそっぽを向いてしまった。
「やっぱ生徒をいじるのは楽しいねぇ。あっはっはっ!」
明子は豪快に笑った。
ただでさえ明子が入ってきて目立っていたのに、教室中に響き渡るような声で笑われてしまっては、もうクラスメートの注目の的である。
「ほらほら。見せもんじゃねぇぞー」
稔が言ってもあまり意味がない。というか、本人はさして止める気はない。
千歳が注目されて恥ずかしそうに俯いている今もなお。
「で、先生。用事はなんですか?」
いい加減うんざりした口調で優一が訊く。
話を進めなければこの状況はいつまでも改善しない。
「あぁそうだったな。塚越に立花。お前ら二人、放課後補習な」
明子は事もなげにさらりと言い放った。
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