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「ほ、補習ですか!?」
千歳は目を丸くした。
千歳にとって錬金学の補習というのは初めての体験である。
「そーだ。お前はいつも低空ギリギリ飛行をしていたが、今回とうとう墜落してしまったんだ」
明子は黒縁の眼鏡をくいっと上げた。
つまり千歳は今までは何とか持ちこたえていたが、今回とうとう落ちてしまったらしい。
「そうですか……」
千歳は肩を落とした。
危ないと分かっていても実際に引っ掛かってしまうと、ショックは大きいものだ。
「まぁ俺はいつでも燃料不足だからなぁ。予想はしていました」
優一は墜落前提で物事を進めているので、全く物怖じすることはない。
さして誇れることでもないのだが。
「そういうわけだから今日の放課後、お前ら二人揃って錬金学研究室まで来るように。じゃあな」
明子はそれを言い置くと白衣を翻して教室を出ていった。
「ったく。しかたないなぁ」
優一は弁当を片付けながら千歳を見る。
「それじゃあ立花さん。放課後ご一緒願おうか」
「は、はい!」
千歳はなぜか嬉しそうに答えた。
「……」
その様子を穏やかではない目で見る操。
「ははは……。俺だけすげー疎外感」
稔は夏の爽やかな風に吹かれていた。
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