地に潜む者

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昇降口を出ると、夕方とは思えない強い日差しが二人を照らした。 「うわっ、暑いなぁ」 優一が片手でそれを遮る。 「ヤダヤダ。夏ってやつはさ。たとえ裸になったって暑いものは暑いんだから」 「地球温暖化のせいでしょうか?年々暑くなってる気がしますね」 千歳は汗一つかいていない。至って涼しい顔で太陽を見上げていた。 「うーん……。清楚キャラは、やはり汗をかかないのか……」 何やら一人ごちする優一。 「何か言いました?」 「いや、何でもないよ」 校門のところで野球部の部員たちとすれ違う。白いユニフォームに染みを作り、汗を拭いながら走るその様は、夏の選抜大会に向けてのひた向きな姿の表れだ。 明神学園の野球部は毎年いいところまでいくものの、未だ甲子園出場は果たしていない。 今年こそは。 それは誰もが願っていることだった。 「いやはや。青春してるねぇ」 部員たちを横目で見送りながら優一は言った。 「塚越君、何だかお年寄りみたいです」 千歳はくすくすと笑っている。 「なーにラブラブしてんだよっ!」 馬鹿みたいに陽気な声。 野球部員たちが過ぎたその先に、よく見知った顔があった。
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