地に潜む者

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「よし。だいたいこんなもんかな」 最後のマンドラゴラを放り込むと、優一は満足そうに頷いた。 籠の中に山と積まれた不恰好な人参もどき。これだけあれば明子も文句は言うまい。 「疲れましたぁ……」 千歳はその場にへたりこむ。 肩で大きく息をしているところを見ると、彼女はあまり体力は無いようである。 「まったく。だらしないわねぇ」 一方操は腕を組み、自信満々といった表情で千歳を見下ろしている。疲れた様子など微塵も感じられない。 「勉強だけ出来ても仕方ないのよ?女たるもの、体力だってなくちゃ困るんだから」 嫌味ったらしい口調の操。 千歳は悔しそうに操の顔を見上げた。 「ふ、ふん。桐生さんみたいに筋肉バカになっても仕方ないです」 悔しそうと言っても口だけは負けていない。 「何ですってぇ!!」 どうやら今の発言は操の逆鱗に触れたらしい。叫ぶのと同時に風のエーテルがほとばしり、右腕をとりまく風が形成された。 「もう怒ったわ!私の風で細切れにしてあげる!」 「わー!ちょっとタンマタンマ!」 稔が慌てて二人の間に割って入る。 「いくらなんでもそりゃマズイって!そりゃ頭に来るかも知れないけどさ、曲がりなりにも友達だろう?ここはひとつ心を穏やかに――」 「うるさいっ!!」 我を忘れた操に稔の言葉は届かない。右手を稔の腹に当てると、蓄えた風を一気に解き放った。 「ぐふっ!うげぇっ!!」 当然受け身など取れるはずがない。稔は千歳の頭上を飛び越え、その後ろに聳える大木に背中をしたたか打ち付けた。 「な、なぜだ……」 大木の根元で、稔はぐったりとうなだれた。 「あーあー。何やってんだか――」 ドクン―― 「!?」 苦笑いを浮かべた優一の顔が、一瞬にして凍りついた。
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