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「くそ、意外と暗いな……」
一寸先は闇という言葉を具体化したら、きっとこのような感じになるのだろう。言葉の意味は別として。
「手探りでなきゃ進めやしないな……」
視界ゼロ。
右手の感触以外で距離を掴む術はない。光の入らない洞窟の中は想像以上に暗かった。
(稔はうまくやっているだろうか)
その一切を任せてしまったが、正直悪いと思っている。しかし、今の自分では操を刺激してしまうだけ。稔に任せるしかなかったのだ。
(操か……)
一体何を怒っているのだろう。
私の気持ちなんて分からない。
彼女はそう言っていた。
確かに自分には操の考えていること、思っていることは分からない。だが、一体何を分かれと言うのか。
(こういう考えがいけないのかなぁ)
いずれにせよ、何らかの形で埋め合わせはしなければなるまい。多分、悪いのは自分だから。
「おっ?」
洞窟の奥の方が、微かながら明るくなっている。
外にでも繋がっているのか。
(ノームが言ってた場所か……?)
光に近づけば近づくほど、感じるエーテルは強くなる。奥に居るのは間違いない。
恐らくそこに千歳も居るはずだ。
「さぁて、覚悟を固めるか」
足場の悪さに注意しながら優一は歩みを速めた。
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