地に潜む者②

3/35
前へ
/396ページ
次へ
「こんな所があったのか」 横穴を進んでいくと、突然開けた場所に出た。 まるでそこだけをくり抜いたような大きな縦穴。その底に優一は出てきたのだ。 垂直な壁の先には満月が顔を覗かせている。さっきの光はこの月の仕業だろう。 「登れるわけは……ないか」 何しろ地上が遠く見える程に高い壁だ。360゜ぐるりと囲んだそれに、足場らしきものは無い。羽でも生えていれば話は別だが、常人には到底登れるものではない。 「でも、ここが終点のようだな」 先に続く道はない。 ならばここにノームが居るはずだ。 「おい。居るんなら出てこいよ。俺は逃げも隠れもしないぞ」 返事はない。 どこかに身を潜めているのか、本当に居ないのか。 「立花さん、居たら返事を――」 「塚越……君……」 「!!」 今度は答えた。 蚊の鳴くような弱々しい声だったが、優一は聞き逃さなかった。
/396ページ

最初のコメントを投稿しよう!

90796人が本棚に入れています
本棚に追加