地に潜む者②

4/35
前へ
/396ページ
次へ
「立花さん!!」 優一は急いで千歳に駆け寄った。 「こいつはひどい……」 千歳は両手首と両足首を土で塗り固められ、磔にされたような格好で捕らえられていた。顔からも疲労の色が見て取れる。 大分長い時間この状態でいたようだ。 「待ってて。今助けるから」 「だめ……です……」 千歳は弱々しい声を必死で振り絞る。 「塚越君の……後ろに……!」 「後ろ?後ろに何か――!!」 背中にピリピリと伝わってくる、殺気を帯びたエーテル。 言い終わるより早く優一は転がるように横へ跳んだ。 『はぁっ!!』 刹那、優一がもと居た場所に巨大な拳が降ってきた。 その拳は地面に深々とめり込む。 『ちぃ、外したか。てめぇの感知能力は甘くねぇようだな』 拳を抜きながら、ノームは言葉だけの賞賛を送った。 「……どこに隠れていた?」 優一の力を持ってすれば、この場所に入った瞬間に気付いてもいいはず。しかし、今の今まで気付かなかった。 優一は睨むようにノームを見上げる。 『なぁに。簡単なことさ』 笑うように言うと、ノームは壁に手をついた。 『よっと』 掛け声をかけると、その手がゆっくりと壁にめり込んでいく。 先程のように粉砕しているわけではない。壁を破壊せず、溶け込むように入っていっているのだ。 『俺は土の精霊。周囲の土と同化することぐらい造作もねぇんだよ』 「……なるほどね」 優一は制服の土を払いながら言った。 「土の精霊の力ってやつも、どうやら甘くないみたいだな」                
/396ページ

最初のコメントを投稿しよう!

90796人が本棚に入れています
本棚に追加