90796人が本棚に入れています
本棚に追加
『ふふん。一人で来るたぁなかなか度胸があるな』
「止むを得ずってやつだよ」
言っている間に優一は距離を取る。先程は不意打ちだったが次はそうはいかない。いつ攻撃されてもいいように身構えた。
『ふぅん。まぁいいだろう』
何を納得したのか、ノームは顎に手を当てて頷いている。
『少なくともてめぇを殺す目的には変わりゃしねぇ』
言い終えると、ノームは両手を地面についた。
「……何をする気だ?」
優一は眉をひそめて問う。無論、不慮の事態に備えることも忘れない。
『見てりゃ分かる。てめぇはエーテルの流れでも見てやがれ』
「……?」
確かにノームの手から多量のエーテルが地面に流れ込んでいる。しかし、それが一体何を意味しているのか。現時点ではまだ分からない。
『ふふふ……』
堪えきれないというように笑い声を漏らすノーム。
「何が可笑しい?」
依然、地面にはエーテルが流れ込んでいる。
『いやなに。てめぇを殺す場面を想像すると面白くてなぁ。――来たぜぇ!!』
その声を合図に、突如として地面が盛り上がる。
「なんだ……?」
地面から生えてきた土の柱は、人の身長程のところで成長を止めた。そして、まるで生き物のように蠢き、変化を遂げる。
寸胴だった柱から手と足が伸び、目や鼻といったパーツの無い顔が形成された。さらに両手の先からは剣状の尖った物が伸びる。
「……ゴーレム」
ノームのエーテルを身に宿した土の傀儡は、ゆっくりと動きだした。
最初のコメントを投稿しよう!