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すっかり暗くなった斜面を下る。頼りになるのは月明かりだけ。それでも足元はよく見えない。
しかし、構わず操は斜面を下る。
(何なのよ!)
確かに千歳は友達だ。それは分かっている。分かっているが、それでも割り切れない気持ちがあった。
優一が必死になっている姿を見ていると、悔しくて切なかった。
(何なのよ)
頭が冷えてきたのか、冷静な判断が出来るようになった。
よくよく考えてみれば、友達のピンチに助けに向かうのは当然のこと。優一は当然のことをしているだけなのだ。
でも、それでも――。
「きゃっ!!」
足を派手に滑らせた。足元がよく見えない上に悪路だ。操は後ろにひっくり返った。
「……」
今になって罪悪感が込み上げてきた。自分はなんて馬鹿なのか。一時の感情に任せてひどいことを言ってしまった。
優一がどんな人間なのかは、自分が一番よく知っていたはずなのに。
「何なのよ……」
操は泣きそうな顔で月を見た。
今更戻るなんてことは出来ない。優一に合わせる顔がない。
そして何よりも、優一に怒られるのが怖かった。
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