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「くぅ……!」
千歳は悔しさを感じていた。
目の前で友達が戦っているのに、自分は加勢することが出来ない。
特に優一は命の危機に瀕している。致死量に至っていないとは言え、何の処置もせずに放っておくのはまずい。
(これさえ無ければ……)
両手首両足首を土で塗り固められている。ノームが自分を連れてきて真っ先にやったのがこれだ。これを何とかしなければ、助けには行けない。
「この!この!」
動かそうにもびくともしない。どうやら相当硬く固められているようだ。
ノームの力を持ってすれば、土も鋼鉄に変化するのかも知れない。
(土……?)
千歳は気付いた。
いくら鋼鉄のように硬いとは言っても、相手はもともと土だ。
鍬を入れれば耕せる。
水を加えればドロドロに溶ける。
そんな脆いものなのだ。
(だったら……)
自分の魔法を使えば脱出できるかも知れない。
千歳は目を瞑り、エーテルに力を込めた。
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