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『ほほぅ。なかなか善戦してるなぁ』
ゴーレムたちの後ろでふんぞり返っているノームが、面白そうに声を上げた。
『いつまで持つかねぇ。ま、エーテルが尽きた頃に殺してやるよ』
「馬鹿にしてっ!」
しかし、エーテルに限界がある自分たちと、無限に近いエーテルを所持するノーム。圧倒的に不利なのはこちらだ。
(何とかしなきゃ……)
そう思っても名案は浮かばない。
もはや万事休すか……。
「お二方!後ろに下がって!!」
叫び声と同時に目の前を水流が通り過ぎる。
「きゃあっ!」
「うおっ!」
声のした方向を確認する暇もなく、二人は後ろに下がった。
「な、なんだこれは……」
稔は固まった表情で目の前の光景を見ている。
滝を横にしてそのままの勢いで流したら、恐らくこのようになるのだろう。
水のカーテン。
そう呼んだ方がしっくりくる。
見上げる程高い激流が、二人の前を通り過ぎた。
「す、すごい……」
目の前の光景は、まるで嵐が過ぎ去った後のようだった。
地面は水流に合わせて抉られ、大きな半円形を作っている。
そして何よりも、ゴーレムの数が激減していた。餌に集る蟻のように大群を成していたゴーレムの数が、今は数える程しか居ない。恐らくさっきの激流に飲まれたのだろう。
「……」
さらに不思議なことに、水溜まりのようなものが一つも出来ていなかった。
あれほどの水量だ。辺り一面が水浸しになってもおかしくない。しかし、その水は跡形もなく消滅していた。
「……魔法」
そう結論づけた操は、改めて声のした方を向く。
「間に合いましたね」
そこには、立花千歳が立っていた。
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