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「す、すげぇ……」
一連の流れを見ていた稔は驚きの声を上げた。
普段目立たなく、か弱そうな雰囲気のある少女が、土の精霊の腕を破壊したのだ。驚かないわけがない。
「すごいじゃない……」
操も同じ感想を抱いたようだ。目の前まで来た千歳をまじまじと見ている。
「はい」
千歳はにこりと笑った。
「一応、明神学園の生徒ですからね」
「なるほど……さすが……だな……」
皆の足元でうずくまっていた優一が、肩で大きく息をしながら言った。
「大丈夫……ではないですよね」
千歳はしゃがんで優一を見る。
「見ての通りだ……。すまない……くっ!」
優一は苦しそうに唸っている。
脂汗で髪を濡らし、顔も漂白剤に浸したような色をしている。
芳しくない容態なのは、火を見るよりも明らかだった。
「ごめんなさい。私のせいで……」
千歳は優一の手を握る。
その手は、氷のように冷たかった。
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