90796人が本棚に入れています
本棚に追加
「魔法医療……」
操も受けたことがあった。
傷の治りもそうだが、エーテルがいかに人体に影響を及ぼしているかを再確認した覚えもある。
「でも、使うには大学で教育を受けなきゃいけないんじゃ?」
魔法医療を扱うには普通の医療と同じように、専門的な知識と技術が必要となる。素人、ましてや普通の高校生が扱える代物ではない。
「そういえば、みなさんにはまだ言ってませんでしたね」
千歳は操を見上げると、笑顔はそのままに言った。
「私の家は代々医者を生業としています。父もその例に漏れないのですが、どうやら私にも医者になってもらいたいようです。
私はなりたいと言ったことはないのですがね」
と、千歳は頬を掻いた。
「私はそんな父に、幼少の頃から魔法医療の知識や技術を教えられました。当然実習も含めて。
免許こそありませんが、大学レベルの教育は受けていると思いますよ」
「なるほど。つまりはモグリの医者みたいなもんか」
稔が納得したように頷く。
「しかし人前で晒せるものじゃねぇな。まぁ開業とかしなきゃいいんだろうけど」
「このことは穏便にお願いしますね」
千歳は可愛らしく手を合わせた。
愛娘に後を継がせる。
千歳の父はそんな想いから行動に出たのだろう。娘の意志は関係なしに。
まぁ結果として役には立ったので、父の努力は無駄ではなかったのだが。
最初のコメントを投稿しよう!