地に潜む者②

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「よぉし。あとは俺の仕事だな」 優一は膝に手をついて立ち上がった。 「さっさとノームを倒さなきゃな。怒り心頭みたいだし」 優一の視線を追うように他の三人もノームを見る。 『許さねぇ……許さねぇぞ……』 ノームは怒りに震えていた。 『散々俺をコケにしやがって!てめぇら皆殺しにしてやる!!』 目の黄色い光は赤に変わり、エーテルも昂ぶっているようだ。 片腕の先を失っていると言っても、まだまだ力は衰えていない。 「体中からエーテルが噴き出してやがる。どんだけモンスターだよ」 「あっ、私も手伝い――」 「いや。結構」 加勢を申し出た千歳を、優一は片手で制した。 「さっきノームの片腕を奪った時に、大半のエーテルを消費したんじゃない?立花さんからあまりエーテルを感じないし」 「……分かります?」 「伊達に『無』を持ってるわけじゃないからね」 続いて操と稔を見る。 「二人も残りエーテルが少ないみたいだな。ちょっと力を温存しといてくれ」 「勝算はあるのかよ?」 稔が訊く。 しかしその質問とは裏腹に、心配の念は微塵も感じられない。 「無かったら言わないさ」 優一は自分の胸を叩いた。 「ゴーレムから十分すぎるぐらいのエーテルを吸収したからな。毒こそあれど、一応は精霊のエーテル。負けやしないさ」 口調から漂う絶対的な自信。 皆を安心させるそれは、決して強がりなどではない。 「……優一」 そんな優一を操は頼もしく思う。しかし、それで納得するのも何だか悔しかった。 「危なくなったらちゃんと言いなさいよ。助けてあげるから」 自分は守られるだけの存在ではない、ということらしい。 その主張を聞いた優一は、 「……ふっ」 鼻で笑って背中を向けた。 「なっ、なによ!言いたいことがあるならちゃんと言いなさい!!」 操の怒りを背中で受けとめる。 「流れ弾が飛んでくるかも知れない。その時はお前の風で二人を守ってやってくれ」 そう言い残し、優一はノームへと向かう。 背中を預けられる友が居る。だからこそ、自分は思い切り戦える。 しかし、優一はその想いを表に出すことはない。 彼はやはり不器用なのだ。
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