地に潜む者②

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『あぁ?何やってんだ!』 「……」 ノームの怒鳴り声を無視して、優一は意識を集中する。 『聞いてんのかてめぇ!!』 「……」 その量もさることながら、地下水の在処は深い。 操るにしてもエーテルをそこまで届かせる必要があった。 ゆっくりと、水が地面に染み込むように。 『あぁ?てめぇ、何してんだ?』 足音が近づいてくる。 「……」 それでも優一は、神経を研ぎ澄ませる。 (もう少し……もう少し……) エーテルを通して感じる気配は近くなっている。 『ははぁ。さては俺が両腕を失ったから攻撃出来ないと思ってやがるなぁ?』 怒りで我を忘れたのか、ノームは全く見当違いなことを言っている。 たが、今の優一にそれを構っている暇はない。 (もう少し……もう少し……) 土の粒子の間を抜け、岩を避けて進む。 地下水までの距離は1キロとも10キロとも思えた。 『両手が無くったってなぁ……』 ノームが攻撃動作に入るのを感じた。 しかしここで止める訳にはいかない。エーテルだって相当使っているのだ。 ノームの攻撃が先か、自分の攻撃が先か。 それは、神のみぞ知ること。 『足ってもんがあるんだよぉ!!』 怒号と一緒に、頭上に大質量の何かを感じた。 それは真っすぐ自分に向かってきている。 (来たっ!!) だが、寸手の差で優一も届いた。 瞬時にエーテルを展開。地下水全体に浸透させると同時にその場から転がる。 『死ねええええええええっ!!』 半秒前まで優一が居た場所に、ノームの足が深々と突き刺さった。
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