地に潜む者②

26/35
前へ
/396ページ
次へ
「あっぶねぇ……」 優一は土煙を被りながら言った。 地面にめり込んだ武骨な足を見ると、まともに喰らった時の場面が容易に想像出来た。 『ちぃ!外したか』 ノームは悔しそうに言って足を抜いた。 地面はノームの足形に沈み、ヒビも入っている。 『だが次は外さねぇ!覚悟しやがれっ!』 「残念ながら次はないぞ?」 無い腕を振り回して怒るノームを、優一は鼻で笑いながら見た。 『あぁ?何言ってんだてめ――』 ピシッ 『んっ?』 ピシッ 何かが割れるような音がした。 ピシッ それは足元からしている。 『な、なんだ?』 見ると、さっき踏み付けた場所のヒビが、徐々に徐々に広がっていた。 ピシッ ピシッ 不穏な音は尚も続き、ヒビは広がっていく。 『てめぇ!何をした!?』 動揺を隠せない様子で睨み付ける。 その先には、不敵な笑みを浮かべた優一が居た。 「何?簡単なことさ」 優一は感じていた。 烈火の如く昇ってくるものを。 地の底より湧き立つ強大なものを。 「お前に引導を渡す『力』だよっ!!」 ドゥッ! 轟音と共に岩盤を突き破る。 『うぉわっ!!』 ノームが尻餅をつく。 顔前に現われたそれに、思わず圧倒された。 火山の噴火を彷彿とさせるそれは、優一のエーテルを孕んだ水。優一に誘導され、地上まで昇りつめたのだ。 そして、驚愕するノームを尻目に月を仰ぎ、しばしその場で静止する。 「さぁて、覚悟はいいか?」 優一が右手を挙げる。 それに呼応するように水竜は鎌首をもたげ、哀れにも震えている土の精霊を見下ろす。 『待て!話せば分かるっ!!』 「聞く耳持たんっ!!」 許しを乞うノームを断罪するように、優一は右手を振り下ろした。 『う、うわあ――』 殺到する水竜は、断末魔を残す暇さえ与えない。 問答無用でノームを咀嚼する。 だが、それだけでは終わらなかった。 水竜はそのまま地面に衝突して四散。大波を起こしてフロアを満たした。 「ちょっと強すぎたかなぁ」 優一はノームのエーテルが消滅したのを確認すると、水のヴェールを展開させた。 「まぁ、結果オーライか」 大波は優一を避けて通り過ぎる。 水竜に反逆は許さない。 「きゃああああああっ!!」 「どわああああああっ!!」 「優一のアホおおおおおおっ!!」 不意に聞こえる三色の悲鳴。 「いけね。操たちも居たんだっけか」 噴水は尚も止まる気配を見せない。
/396ページ

最初のコメントを投稿しよう!

90797人が本棚に入れています
本棚に追加