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「やっほ~。無事……ではないようだな」
「あったり前でしょうがっ!!」
怒鳴り散らす操。
頭から足の先までぐっしょりと濡れている。
「うへぇ。パンツまで救い用が無くなってるぜ……」
「っくしゅん!!」
他の二人も同じように濡れていた。
「あんたは手加減てものを知らないの!?」
「冗談。手加減なんてしてたらこっちが死ぬ」
困ったお嬢さんだ、とでも言いたそうに、優一は肩をすくめた。
「あんたねぇ……」
操はこめかみを押さえる。
まだまだ言いたいことは沢山あったが、優一の腑抜けた(ように操の目には映った)顔を見ていると、その気も削がれてしまった。
「……まぁいいわ」
やり場のない怒りをため息に乗せて吐き出し、再度操は言う。
「で、ちゃんと始末したんでしょうね?」
「あぁ。綺麗さっぱり消滅したよ」
「……そう」
まだ噴き出している水を見る。
月明かりに照らされた噴水はどことなく神秘的で、見ていると何だか心が洗われるような気がした。
(まぁ、一応合格か)
怒りの気持ちまで洗われた操は、優一をそう判定した。
「ところで優一よ」
シャツの裾を絞りながら、稔は噴水を指差した。
「あれ、どうやって止めるんだ?」
彼が心配するのも無理はない。
先程の攻撃と今までの噴水によって、このフロアは水浸しとなっている。地面に吸収しきれない水が地上に溜り、雨上がりの校庭のような情景を作り出していた。
このまま水が止まらなければ、やがては水がこの空間を満たしてしまいそうだった。
「あぁ。それ無理」
しかし優一はそんな心配事をしてる風もなく、重大事項をさらりと言ってのけた。
「さっきの戦いでエーテルはスッカラカン。絞っても逆さにしても出てこないぞ」
「なっ……」
稔は絶句するしかなかった。
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