地に潜む者②

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「どーすんだよ!止めなかったらまずいだろっ!!」 「だろうな。この空間を満たすぐらいの水量はあると思う」 発言とは裏腹に、全く動じていない様子の優一。 「どうするんですか!?出口は塞がれてるし、私ではあれだけの水は操れないし……」 さすがに千歳も狼狽する。 「始めからそんなことさせる気はないさ。ついでに言うと、止める必要もない」 優一は首を横に振った。 「いや、意味が分からないんだけど……」 恐らく優一以外の皆が思ってることを、操が代弁した。 「お前の出番だっつってんのよ。みさちゃん」 優一は操を見て笑うと、続いて上空を指差した。 「お前の風で俺たちを地上まで運んでくれ。そうすりゃ万事OKだ」 「はぁ?」 優一が指差す先を見る。 学園の校舎はすっぽり入って尚且つ余裕がありそうな高さだが、確かにエーテルの残量から言っても問題ない。 しかし…… 「あんた、最初からそういう魂胆だったの?」 優一を睨め上げる。 「愚問だな。答えるまでもない」 優一はしゃあしゃあと言ってのけた。 「分かったら早くやってくれ。ほら、靴がもうグシャグシャだ」 「……あんた、いつか絶対ぶっ飛ばしたげる」 恐ろしく低い声で操は言い放ち、エーテルを展開して風を発動させた。 「桐生さん、何だか怖いです……」 「触らぬ神に祟りなしってうぉわっ!!」 千歳の言の葉は風に溶け、足をすくわれた稔は悲鳴を上げた。 「よう。もう少し優しく出来ないか?」 運んでもらう立場で何かと注文が多い優一。 「うるさい黙れ!」 ぴしゃりと叩きつけ、操はみんなを連れて浮上した。
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