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「わ、わけ分かんないわっ!」
やっとの思いで反論した。
この少女は、一体何処まで知っているのか。
やはり全てを見透かしているのか。
自分の想いを、全部知ってしまったのか。
しかし、動揺しているということは、的を射ているのだろう。
「あなた、やっぱりおかしいわよ!!」
だが、認めたくはなかった。
認めてしまったら、何だか負けてしまうような気がしたから。
「ふふっ。まぁいいでしょう」
千歳はクスクスと笑う。
「では、私からの勝手な宣戦布告ということで。よろしくお願いしますね」
すっと差し伸べられた、小さな手。
それが何だか大きく感じられた。
「……」
操は何も言わずに、それを握り返す。
表情は複雑なままだが。
「おーおー。何だかんだで進展してるじゃないですか」
少し後方で、稔は我が子の成長を見守る父のような表情をしていた。
「くー……」
方や優一は、稔の隣で眠りに入っている。無防備すぎる寝顔だ。
(やれやれ。襲われても知らねぇからな?)
前の二人に見せたら一体どんな反応をするだろう。
試してみたい気持ちがあったが、やめておくことにた。
一応親友を名乗る者としては、それぐらいの気遣いは持っておきたい。
「なんで俺にはああいう娘が来ないかね?」
稔の呟きは誰にも聞こえず、風に溶けて流される。
そろそろ校庭が見えてくる頃だ。
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