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「なるほど。昨夜そんなことがあったのか……」
桐生明仁は顎をさする。
「うーん。私の力も弱くなってきたのかなぁ」
「いや。そんなことはないかと」
明仁の向かい側に座っている優一は、差し出されたお茶を一口啜り、首を振る。
「校長先生の力は衰えてないと思います。ただ、今回は相手が悪かった」
「そーそー。お爺ちゃんは何も悪くないわよ」
操も笑って同意した。
なお、稔と千歳の二人も同席しているが、緊張の面持ちで口を開いていない。
「ありがとう。しかしどちらにせよ、結界はあまり有効ではなかったと言う訳か」
明仁は苦笑いを浮かべた。
戦いから一夜明けて、優一たちは事後報告に来ていた。
と言っても、話すことはあまりない。ノームとの戦いで生じた問題と、裏山に大きな池が出来たぐらいだ。
「ま、当面は君たちに任せるよ。あとどれくらい敵が居るかは知らないけど」
その敵が結界を破る程の力を秘めていると知ってなお、明仁は優一たちの任を解く気は無いらしい。
それを過信と言うべきか、教育の一環と言うべきか。
結果は神のみぞ知る。
「ところで、そっちの二人はどうしたんだい?」
返事を聞くでもなく、明仁は稔と千歳を見た。
「あ、えと……」
「そ、その……」
よほど緊張しているのか、二人は言葉を紡げなかった。
「あぁ。二人には昨日手伝ってもらったんですよ。まぁ見られたからどうってこともないし、これからも手伝ってもらうつもりです」
変わって優一が代弁した。
二人から確証を得た訳ではないが、優一の中では助力をすることで確定しているらしい。
「それは構わないよ。人数は居た方がいいだろうからね」
明仁は自分のお茶を一気に飲み干した。
「まぁ、明日から夏休み。ゆっくり体を休めてくれ」
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